トイプードルのコロンとした短いしっぽや、コーギーのプリプリした桃尻はとても可愛いらしいです。しかし、これらの犬のしっぽやお尻は生まれつきではないのをご存じでしょうか?実は生後、間もない頃にしっぽを切り落としているのです。
犬のしっぽの一部もしくは全てを切断することを「断尾(だんび)」といいます。なぜ「断尾」が行われるのでしょうか。「断尾」についてまとめました。
犬の断尾をする理由
犬のしっぽを切断する理由として主に4つの目的が挙げられます。
1. しっぽの損傷を防ぐため
闘犬や狩猟犬、牧羊犬はかみちぎられたり踏みつぶされたりすることがあります。
そのため、しっぽの怪我や損傷を防ぐため、古くから断尾が行われていました。
2. 犬種の伝統のため
品種認定やドッグショーを開催しているケネルクラブでは、コーギーやドーベルマンなど一部の犬種において「犬種標準」として断尾を行うことが決められています。
古くから断尾が行われてきた犬種に関しては、伝統を維持することも断尾が行われる理由の一つです。
3. フンなどによる汚染を防ぐため
一般的に毛が長い犬種はしっぽの毛も長い特徴を持ちます。特に外で飼われている犬の場合、しっぽに付いた糞便による汚染からウジ虫が湧いたり、皮膚病につながるケースがあります。
そういった不衛生を防ぐ理由で断尾が行われることがあります。
4. 生まれつきの変形をなくすため
生まれつきしっぽが曲がっている子犬がいます。しっぽが多少曲がっていても犬の生活に大きな支障はないですが、外観上の問題から子犬の価値下落や市場に出せない子犬になる可能性があります。そういった子犬の数を減らすために断尾が行われることがあります。
犬の断尾の歴史
断尾の歴史的背景
昔の犬は人間のために利用される犬として狩猟犬や牧畜犬の役割を担っていました。
このような犬にとって、しっぽがあると仕事上不便なことが多かったため、断尾が行われるようになりました。
狩猟犬はやぶの中に入って獲物を追いかけますが、しっぽがあるとやぶで傷つきやすく、細菌が感染しやすいというデメリットがありました。
コーギーなどの牧羊犬は牛や羊を追うときに長いしっぽは踏まれてしまう危険性があります。
ドーベルマンなどの警備犬は長いしっぽは引っ張られてしまうと考えられました。
このような点から、犬が安全に仕事を行うためにはしっぽが短い方が良かったのです。
断尾が行われる代表的な犬種
断尾が行われる代表的な犬種は次のとおりです。警察犬として活躍していることが多いドーベルマンの場合、断尾だけでなく耳も切断する「断耳」も行われています。
断尾が行われる時期と方法
犬の断尾は生後間もない10日までの時期に行われます。しっぽの切除の方法としては次の2種類の方法が用いられます。
断尾のデメリット
ほとんどの犬が愛玩犬として飼われるようになった現在でも断尾の習慣が続いているのは、断尾された姿がその犬種の伝統であるためという理由が大きいと言えます。犬の断尾は必要なのか、犬にとってのデメリットをまとめました。
1. 痛みを伴い感染症を起こすリスクがある
断尾の際、痛みを伴い感染症を起こすリスクがあります。子犬の時期は知覚が発達していないため、しっぽを切断しても痛みを感じていないと信じられていましたが、最近の研究では子犬も痛みを感じているという事実が明らかになっています。
2. コミュニケーションが取りづらくなる
断尾をすると、他の犬とのコミュニケーションが取りにくくなる可能性があります。犬はしっぽで感情表現をしますが、断尾されている犬はしっぽを振って気持ちを伝えることができません。そのため、他の犬とコミュニケーションが取りにくくなります。
まとめ
海外では動物愛護の観点から、イギリス・ドイツ・オランダなどヨーロッパを中心に犬の断尾は法律で禁止されるようになりました。
愛玩犬として飼われている犬達が現在でも断尾が行われていることについて、犬にとってのデメリットを考えると「今も必要なのか」と疑問に思う飼い主さんは多いのではないでしょうか。
日本では断尾を禁止する法律・規約はありません。まずは断尾という習慣があることをきちんと知っておきましょう。